逆流する津波ー河川津波のメカニズム・脅威と防災ー

逆流する津波ー河川津波のメカニズム・脅威と防災ー

(BK-22328)

今村文彦 著 A5判 160ページ

東日本大震災以来、注目されることの多い「河川津波」を取り上げ、そのメカニズムから脅威、津波全般に関しての防災・減災の考え方や取り組みをまとめている。<基礎編><応用編><対策編>の3部構成。事例は、著者の活動が東日本大震災の被災地東北:仙台を拠点としているため、大震災時の津波事例が多いが、その他や海外の事例も随所に取り上げ解説。

【はじめに】
日本は、過去から津波の被害を受け、得られた貴重な経験と教訓から地域の復興を遂げてきました。この経験の中で、東日本大震災など最近の津波災害で注目されているのが「河川津波」です。
津波は海域から伝わり陸地に来襲しますが、いち早く河口などから入り、河川や運河・水路に沿って内陸奧深くまで遡上(さかのぼっていく)してきます。通常、河川は川上から川下へ流れていますが、地震発生の際にはその流れが逆流します。東日本大震災では、津波の遡上が河口から約50kmの場所でも記録されていました。
さらに、河岸堤防を越えて市街地などに浸入し、思わぬ方向や経路から来襲してきます。津波が船舶や木材等の漂流物を巻き込みながら河川を遡上する場合もあり,橋でせき止められて水位が増したり、これら漂流物が橋に衝突して落橋や橋桁を損傷させたりしています。さらに都市化に伴ってビル等の間から浸入する津波は、より加速しスピードを増し、突然、マンホール等から吹き出す津波も報告されています。
自然災害は,常に進化すると言われていますので、本書により、多くの皆さんに新しい津波の姿を知っていただきたいと思います。

【目次】
〈基礎編〉

第1章 津波とは?
1.1 歴史に残された津波
1.2 世界語になった「Tsunami」(津波)
1.3 津波の発生メカニズム
(1) 海底地震による発生
(2) 地震以外での発生
1.4 2018年インドネシアで発生した津波の事例
1.5 国境を越えて伝わる津波 ― 太平洋国際津波警報センターの設立
コラム1 エイプリルフールに発生した津波
1.6 深海から浅海へ伝わる津波 ― 津波の速さ
1.7 津波はなぜ大きくなるのか?
1.8 どのような地形と現象で津波は大きくなるのか?
1.9 津波は何度も押し寄せる
コラム2 稲むらの火 濱口悟陵の偉業をしのぶ
1.10 陸上と河川の遡上とは?
1.11 津波の規模の尺度は? ― 津波強度
1.12 津波の特性を表す指標や用語

第2章 河川津波のメカニズム
2.1 河川津波とは?
2.2 河川を遡上する津波の代表事例(日本/世界)
(1) 2003年十勝沖地震津波
(2) 2011年東日本大震災
(3) 2004年スマトラ沖地震インド洋津波:スリランカ
2.3 東日本大震災:新北上川河口付近 ―大川小学校への影響
2.4 東日本大震災:多賀城市砂押川 ―都市型河川津波の恐怖
2.5 黒い津波の実態

〈応用編〉
第3章 河川津波による被害

3.1 陸と海への影響と被害
3.2 津波による犠牲がなぜ繰り返されるのか?
3.3 建物等への被害 ― 浸水深、流速、浸食
3.4 津波による流体力と漂流物
3.5 越流による被害 ― 裏側の洗掘
3.6 河口部での被害
3.7 蛇行部での被害
3.8 複合災害と連鎖 ― 女川での事例

第4章 津波の観測と予測
4.1 予報・予測の重要性
4.2 数値シミュレーションによる津波予測
4.3 予測結果の利用
4.4 南海トラフ巨大地震津波で想定される脅威
4.5 浸水・土砂移動を予測する
4.6 土砂移動とその予測シミュレーション

〈対策編〉
第5章 津波からの防災・減災、そして身を守る

5.1 津波に対する防災対策
5.2 安全に避難するまでのプロセス
コラム3 8つの生きる力 – 災害を生き抜くために必要な力とは?
5.3 危険を知らせる情報 – いかに危険性を察知できるか?
コラム4 インド洋大津波から命を救った少女の話
5.4 津波からの生還例 – 高速道路(高台)へ避難
5.5 車避難は必要か?
5.6 そのとき、逃げ場は! – 認知マップの修正と活用
5.7 オレンジフラッグの活動
5.8 津波緊急避難ビルについて
5.9 防災施設である防潮堤・防波堤の役割
5.10 安全な沿岸地域づくりを – 「津波防災地域づくりに関する法律」と地域的な備え
5.11 今できる備えとは何か? – まずは避難訓練をしてみませんか?
5.12 震災伝承の取り組み
コラム5 津波ものがたり – じぶん防災プロジェクト

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