ドクタートルネード　藤田哲也

藤田碩也/編集　　藤田記念事務局/刊

発刊によせて

出版を祝って　　　末吉興一（北九州市長）

藤田哲也博士の計報に接し、郷里北九州市では同窓生、教え子連の中で故博士の業績を顕彰しようという動きが起こっている。むべなるかなと思う。
市長に就任して以来、シカゴ市や北九州市数回お会いする機会を得た。同郷の親しさもあってか、理系を目指した私との話はよく調和した。竜巻の研究の世界的な権威で、竜巻博士と称された先生であるが、その話は大変面白かった。フランス超音速機コンコルドに搭乗したときの感動や一九九一年の台風一九号の九州での風倒木の状況など少年の如き早口でしゃべられた。年齢を感じさせない話し方だった。今でこそ国境のないボーダレスの時代だが、昭和二〇年代から米国のシカゴ大学で研究を続けたバイオニアスピリットには頭が下がる。そろそろ郷里に帰ってきては…という話が進められていた矢先の計報である。その先生の著作である。故郷のことを常に忘れず未知の世界の研究一筋に生きてこられた博士の業績を紹介する絶好の書でもある。一読に値する高著として、雲や風など知られざる自然の営みに関心のある人にお勧めしたい。