極圏・雪氷圏と地球環境

極圏・雪氷圏と地球環境

(BK-22210)

遠藤 邦彦・山川 修治・藁谷 哲也/編 A5判 カラー口絵4p/243p/索引8p


劇的な変動を示す世界の雪氷圏、各界の最前線で活躍する執筆陣による警世の書・・・ついに発刊!
『極圏・雪氷圏と地球環境』は,北極海の海氷縮小,山岳氷河の消長など極圏・雪氷圏に関わる現在進行中の諸現象について,長期的な環境変遷を視野に入れながら多面的に考察した本です。

第I章「長期的視野で探る極圏・雪氷圏の環境変遷」では,視座を第四紀に置くが,その第四紀自体が気候の寒冷化と密接な時代であること,その環境変遷の実態を北大西洋,南極大陸沖海底コアの氷河性堆積物,有孔虫,磁場変動特性などの解析から,詳細に探れる段階に入ったことが示される。太陽活動は,2007〜2009年に最近200年間で最長の極小期間を記録した。その気候への影響など今後の動向が注目される。これに関する解説は状況の推移を見極める必要性などから他書に譲るが,太陽と地球との関係で非常に重要なミランコヴィッチ・サイクルについては本書で詳しく論説されている。

第II章「山岳氷河の消長」は,本書のなかでも比較的大きな比重を占めていて,その変動の地域性が注目されよう。それぞれの研究者がヨーロッパ,内陸アジア,パタゴニアなどにおけるフィールドワークと衛星データ技術導入によって,氷河の変遷を纏め上げており,貴重な資料といえる。長年,スイス工科大学で学術研究活動を展開されてきた大村 纂教授にも執筆いただき,貴重な写真を含む多彩な構成となったことは,本書にとって誠に幸いなことである。

第III章「永久凍土と積雪変動」は,知られざる地下の雪氷圏変動の実態を解き明かしてくれる。アラスカ大学で学術研究を推進しておられる福田正己教授によるアラスカの永久凍土の彙報,ならびに,新進気鋭の研究者によるモンゴルの永久凍土の報告は,実地観測や如実な景観写真に基づく迫力ある論説となっている。

第IV章「海洋と気候の変動から探る極圏・雪氷圏」では,海洋大循環と気候変動の関係が詳しく述べられている。また,ノーベル平和賞を受賞したIPCC(2007)に関しても雪氷圏関係を抽出して端的に提示され,温暖化時の地球像の把握に有効であろう。近年,気候変動で注目される「北極振動」については,ユーラシアの気候との関係に焦点をあて,わかりやすく解説されているし,トピックスとして記載された「南極振動」も比較考察に有益であろう。また,南極の気象で最も特徴的な接地逆転層の解説も極圏の環境を理解するのに役立つと思われる。加えて,地球温暖化の象徴的現象ともいえる2007年の北極海海氷の史上最縮小については,その過程を明らかにするとともに,広域の天候へ及ぼす影響に言及している。

本書は概略以上のような構成となっており,紙面の都合などで極圏・雪氷圏関係の全てを網羅することはできなかった。2007年秋に開催された同テーマのシンポジウムでは講演いただきながら,今回多忙で執筆されなかった方々もおられるので,その要旨集(日本大学文理学部地球システム科学科編,同学部自然科学研究所の経費による)も参照されたい。そのような事情は幾分あるものの,極圏・雪氷圏にかかわる諸現象について,長年の変動をしっかり視野に入れつつ,近年の動向に注目して,環境変遷や現在進行中の主要な諸問題を多面的・補完的に取り扱った点が本書の特色といえる。

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