こちら南極　ただいまマイナス60度

中山由美/著　　草思社/刊

暗いニュースが多い中で、本書のような活力に満ちた明るいほんの出現は喜ばしい。42人の人間が1年間も、閉鎖された場所で一緒に生活すると、どうしても感情的なもつれから逃れることができない。著者も当然そのような中に巻き込まれる。しかし、著者はへこたれない。
感動的なのは、往復2000キロに及ぶ南極で最も高い基地、標高1.800メートルのドームふじへの雪上車での旅である。風呂に入れないのはもちろん、トイレも野外だ。それでも著者は常に前向きに突き進む。ここでは100万年前の地球の気候を解明するための調査が進んでいるのだ。地球の環境の変化を解明するために調査に携わる人たちの姿、天空や気象の美しい描写が心を打つ。