別冊 日経サイエンス 温暖化危機 地球大異変 part 2
別冊 日経サイエンス 温暖化危機 地球大異変 part 2
日経サイエンス/編 A4変形判 142p
国連の気候変動に関する政府間パネル(IPCC)は,世界各地で熱波や干ばつ,洪水,嵐などが頻発し,マラリアなどの感染症が新たな地域へと拡大,アジア・アフリカのデルタ地帯や南太平洋の島々などが水没する恐れがあると予測する。本書は温暖化と気候変動に関する最新研究成果と,温暖化ガス排出削減に向けたさまざまな取り組みを紹介する。
目次
はじめに
第1章 地球はどうなるのか
地球温暖化の真実 IPCC第4次報告書から
W. コリンズ/R. コールマン/J. ヘイウッド/M. R. マニング/P. モート
早まる春 崩れる生き物たちのリズム D. グロスマン
温暖化で凶暴になる台風 K. E. トレンバース
海洋酸性化の脅威 S. C. ドニー
第2章 残された謎
農耕文明が温暖化を招いた? W. F. ラディマン
温暖化が招いた大絶滅 P. D. ウォード
第3章 危機を回避するには
排出安定化 15の糸口 R. H. ソコロウ/S. W. パカラ
まずは車を見直そう J. B. ヘイウッド
暮らしから考える E. K. ヨーヘム
石炭も使いよう D. G. ホーキンズ/D. A. ラショフ/R. H. ウィリアムズ
離陸する再生可能エネルギー D. M. カメン
原子力を生かす道 J. M. ドイチ/E. J. モニス
海の森 植物プランクトン P. G. ファルコウスキー
第4章 日本の戦略
エネルギー安全保障と一体化した取り組み 十市勉
太陽光レーザーが拓くマグネシウム社会 矢部孝
第1章「地球はどうなるのか」は温暖化と気候変動で地球がどのように変わっていくのか展望する。「地球温暖化の真実」では冒頭に紹介したIPCC第4次報告書のとりまとめに加わった科学者が,そのエッセンスをわかりやすく紹介する。「早まる春 崩れる生き物たちのリズム」は気候変動によって鳥や虫,植物たちの食物連鎖に異変が起きつつある現状の報告だ。近年,米国ではハリケーン,日本では台風による大災害が相次いでいるが「温暖化で凶暴になる台風」によると,それらの脅威は今後ますます高まると予想される。「海洋酸性化の脅威」によると,海洋生物への温暖化の影響も非常に深刻になものになりそうだ。
第2章「残された謎」では温暖化が始まる産業革命以前の話と,温暖化が行き着いた末の話を扱う。温暖化の議論をする際,私たちはよく「産業革命以前の二酸化炭素(CO2)大気中濃度」を基準にとる。だが,人類はそれ以前にも数千年にわたって自然に大規模な手を加え続けてきた。農耕だ。「農耕文明が温暖化を招いた?」では農耕文明の始まりが人間活動による温暖化の始まりであり,それによって,本来ならすでに始まっていたはずの次の氷河期に向けた地球寒冷化の動きにブレーキがかかったとする説を紹介する。近年の研究で,太古,地球では巨大火山活動によってCO2やメタンが膨大な量,放出されて地球が温暖化し,生物大絶滅が起きたことがわかってきた。「温暖化が招いた大絶滅」では,その絶滅への道筋を詳しく紹介する。現在の人類の行いが大絶滅への引き金を引く恐れがあると著者は警鐘を鳴らしている。
第3章「危機を回避するには」はCO2排出削減に向けた取り組みを総覧する。「排出安定化15の糸口」は世界全体で実施すべき削減メニューが具体的な数値目標をあげて提示されている。人類がこのメニュー通りに行動すれば破滅的な事態は回避できる。排出削減に聖域はない。「まずは車を見直そう」では車,「暮らしから考える」では家庭やオフィスでの排出削減策を紹介する。エネルギー生産部門も大変革を迫られる。「石炭も使いよう」「離陸する再生可能エネルギー」「原子力を生かす道」を読めば,なすべきことがわかる。植林は大気中のCO2吸収に有用だが,「海の森 植物プランクトン」では海洋での“植林”の可能性が議論されている。
第4章「日本の戦略」では,日本はどう排出削減に取り組むべきかその方策を紹介する。現実的には「エネルギー安全保障と一体化した取り組み」で述べられた道を進むことが重要だが,一方で「太陽光レーザーが拓くマグネシウム社会」に示された産業構造を大転換させるほど革新的な日本発の技術の育成にも意を注ぐ必要があると考えられる。
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