氷の文化史
氷の文化史
(BK-25002)
田口哲也/著 冷凍食品新聞社/刊
暑い夏の日に氷人りの冷たい飲み物は何物にもかえられない清涼感をあたえてくれます。氷水屋には白地に赤や紺の氷の旗がつきもので、縁台に座って歯にしみる氷いちごを食べたものです。家の台所には夏にしか使わない水用の桶とアイスピック、それに木製の冷蔵庫がおかれいて、夏になると氷を一貫目とか二貫目とか買いに行くのも夏休み中の子供の仕事でした。いまでは、家庭には製氷装置付きの大型冷蔵庫が普及したり、袋詰め氷がいっでもかえる時代になって便利にはなりましたが、夏にしか味わえない冷たい一瞬の氷の感触を味わう風物詩はどこかに置き忘れて来たような郷愁を感じます。
そんな氷のもつ季節感を大切にした「氷の文化史」を田口哲也さんがまとめられました。今年は平安遷都1200年ということですが、氷の利用の歴史も奈良や京都の歴史と同様に大変に古く、清少納言の枕草子や・源氏物語の中にも氷水が夏の貴人たちの宴にはかかせないものとして描かれています。わたしたちの現在の生活では、ややもすると便利さだけを追求しがちで、季節感を失った単調なものになりかねません。氷と人類とのふれあいの歴史を描いた「氷の文化史」は、これからの食のありかたを問い直すいい機会を与えてくれた本だと思います。・・・・序文
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