エルニーニョと地球環境

本書の初版が刊行されてから約２年が経過した。本書の構成がユニークで他に類書が無いこともあって売れ行きがよく，増刷の運びとなったが，この際新たな知見も加えて改訂増補版を出すことにした。具体的には新しい論文を加え，また大幅に書き直した章を含めて，内容を大きく充実させた。前回のエルニーニョは１９９８年の春に終息し，その後はラニーニャ状態が続いていたが，それも終り，新しいエルニーニョ発生の兆しが見られる昨今である。またエルニーニョが単に赤道太平洋水域の事象にとどまらず，グローバルな意味合いをもつこともますます明らかになってきた。その意味でも今回の刊行は時機を得ていると言えるであろう。地球温暖化を防止するための京都議定書の取扱いの行方が混迷する中，地球環境問題は複雑多岐の様相を呈してきている。本書がそのことを考えるためのよすがともなれば幸いである。